肝胆膵外科

肝胆膵グループは、肝胆膵外科を専門とし臨床・研究・教育に従事する医師と、肝胆膵外科の手術手技や知識の習得のためローテーションで従事する医師で成り立っています。安全・確実・根治性が保たれた質の高い手術を目指し全員で日々研鑽を行っています。肝胆膵外科の手術は高難度手術が多いため、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医・指導医が手術に立ち会うことで安全性を確保しています。若手外科医にも積極的に手術に参加してもらい、個人の力量に応じて高度技能専門医を目指すべく術者を担当してもらっています。2015 年と 2016 年には新規 2 名の日本肝胆膵外科学会高度技能専門医を輩出することができました。肝胆膵疾患の手術を中心に診療を行っておりますが、科内の薬物療法専任医師と協力して化学療法を行うことで肝胆膵癌に対する集学的治療を行っております。また悪性疾患だけでなく、胆石症等の良性疾患も多く診療しております。開腹から腹腔鏡手術まで高難度手術を中心に幅広く技術を習得できるグループです。

研究テーマ

①肝門部胆管癌に対する術式および術前術後管理の工夫
力山敏樹教授が自身のメインテーマとして尽力されている分野です。力山教授が当院へ赴任後から自身で執刀されてきた症例の手術適応、術前検査、手術手技、周術期管理と治療成績を集積し、渡部文昭助教、相澤栄俊臨床助教を中心に鋭意、学会発表を行ってきました。今後の益々の発展が期待され、より多くの症例集積をして報告を行いたいと考えています。

②膵切除術の手術手技の工夫と治療成績向上への取り組み
遠藤裕平臨床助教が「Bridge of preoperative biliary drainage:術前待機のための新たなドレナージ管理法」を第50回日本膵臓学会のワークショップで発表するとともに、Pancreatology 誌 に “Bridge of preoperative biliary drainage is a useful management for patients undergoing pancreaticoduodenectomy”として掲載されました。
また、笠原尚哉助教が検討した当科の膵癌術後長期成績が、Pancreatology誌に“A lack of postoperative complications after pancreatectomy contributes to the long-term survival of patients with pancreatic cancer”として掲載されました。

③高齢者の膵頭十二指腸切除の手術適応と高リスク症例の抽出の試み

④胆道癌および膵癌に対する化学療法の治療成績

①研究発表・論文
当グループは、経験した貴重な症例の学会報告や論文作成、各主要学会への参加と研究発表、および論文作成も担当を決めて適宜行い、学術的な活動も幅広く行っています。肝胆膵外科に関連する以下の学会発表や論文発表(症例報告や原著論文)を行います。

・日本外科学会学術集会(4 月)
・日本肝胆膵外科学会学術集会(6 月)
・日本消化器外科学会総会(7 月)
・日本臨床外科学会総会(11 月)
・日本内視鏡外科学会総会(12 月)
・日本腹部救急医学会総会(3 月)
・日本消化器画像診断研究会や日本膵切研究会、外科集談会など

②多施設共同研究への参加
当グループは、日本肝胆膵外科学会やPREP(膵癌術前治療研究会)などの多施設共同臨床研究に参加中です。

・肝細胞癌切除後ミラノ基準内再発に対する再切除術の有用性
・腹腔鏡下膵体尾部切除術における術前難度評価スコア(difficulty score)の有用性に対する検証研究
・膵切除における抗血栓薬服用歴が術後経過に及ぼす影響に関する研究
・残膵癌における先行膵癌との分子病理学的および臨床病理学的検討

特色

当グループでは、肝胆膵診療に必要な専門医・指導医の取得を積極的に支援しており、 2つのカリキュラム①肝胆膵修練医コース(外科学会専門医コース・消化器外科学会専門医コース)②肝胆膵高度技能専門医コースを提供しています。

①肝胆膵修練医コース(外科学会専門医コース・消化器外科学会専門医コース)
(1) 一般目標:日本外科学会専門医および日本消化器外科学会専門医を取得するための症例を経験する。外科経験年数に応じた到達目標を達成するように必要な手術手技・知識や症例数を経験してもらいます。
(2) 到達目標:
・上級医の指導監督下で、胆嚢摘出術(開腹・腹腔鏡下)などの術者を行うことができる(20 例/年以上:外科学会専門医コース)
・上級医の指導監督下で、開腹下脾臓摘出術・肝部分切除術の術者を行うことができる(5 例/年以上:消化器外科専門医コース)
・上級医の指導監督下で、胆管空腸吻合術の術者を行うことができる(3 例/年以上:消化器外科専門医コース)
・上級医の指導監督下で、膵切除・肝切除等高難度手術の第一助手を行うことができる(5 例/年以上:消化器外科専門医コース)
・肝胆膵関連学会において症例報告や一般演題の筆頭または共同演者として発表を行うことができる(1 回/年以上)
・修練期間中に経験した学術的意義の高い症例について、和文または英文で症例報告論文を発表することができる(1 編/年以上)

②肝胆膵高度技能専門医コース
(1) 一般目標:外科学会専門医・消化器外科学会専門医取得後に肝胆膵外科を専門とし臨床・研究・教育を実践していく医師を養成する。日本肝胆膵外科学会高度技能専門医の取得を目指し、後輩の指導を行う。
(2) 到達目標:
・上級医の指導監督下で、膵切除・肝切除等高難度手術(開腹・腹腔鏡下) の術者を行うことができる(計 8 例/年以上)
・修練医を指導する立場として、胆嚢摘出術(開腹・腹腔鏡下)、開腹下脾臓摘出術・肝部分切除術等の助手を行うことができる(計 10 例/年以上)
・肝胆膵関連学会において公募演題の筆頭または共同演者として発表を行うことができる(2 回/年以上)
・肝胆膵関連学会において症例報告の筆頭演者を指導する立場として発表を行うことができる(1 回/年以上)
・上記学術集会において発表した研究演題について、和文または英文で原著論文を発表することができる(1 編/年以上)

手術件数

高度技能専門医取得のための高難度肝胆膵外科手術症例は年間約 50 例となっております。日本消化器外科学会専門医の取得はもちろんのこと、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医の取得についても自施設の症例で目標に到達できる体制となっています。