上部消化管外科
上部消化管グループは、上部消化管外科を専門とし臨床・研究・教育に従事する医師と上部消化管外科の手術手技や知識の習得のためローテーションで従事する医師で成り立っています。手術手技はもちろんのこと、術前における癌の診断学や周術期管理についても日々研鑽を行っています。また、食道癌に対する根治的科学放射線療法や胃癌に対する薬物療法についても当グループで担当しています。早期胃癌に対しては、腹腔鏡手術を積極的に取り入れ、また食道癌に対しては胸腔鏡下腹臥位での切除術を積極的に取り入れております。
研究テーマ
①食道癌化学放射線療法
食道癌に対する手術療法は術後管理の進歩もあわせ、周術期の管理・術式が確立されてきました。しかしながら、いまだに3領域郭清を伴う手術療法は消化器外科領域では最も侵襲の大きな術式とされています。一方、最近の食道癌に対する化学放射線療法(CRT)の効果には目覚ましいものがあり、すべてのStageにおいて第一選択にもなる可能性があります。そこで術前療法、根治療法、再発に対する治療としてのCRTの効果および効果予測について臨床病理学的に検討します。
②食道鏡視下手術再手術に関する全国実態調査
③胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下手術法:全層局所切除 –non touch method– の有用性
①研究発表・論文
当グループは、経験した貴重な症例の学会報告や論文作成、各主要学会への参加と研究発表、および論文作成も担当を決めて適宜行い、学術的な活動も幅広く行っています。上部消化管外科に関連する以下の学会発表や論文発表(症例報告や原著論文)を行います。
・日本外科学会学術集会(4 月)
・日本食道学会学術集会(6 月)
・日本消化器外科学会総会(7 月)
・日本臨床外科学会総会(11 月)
・日本内視鏡外科学会総会(12 月)
・日本胃癌学会総会(3 月)
・外科集談会や消化器病学会地方会など
②多施設共同研究への参加
当グループは、JACCRO や日本胃癌学会、企業主導などの多施設共同臨床研究に参加中です。
特色
当グループでは、上部消化管診療に必要な専門医・指導医の取得を積極的に支援しており、2つのカリキュラム①上部消化管外科修練医コース(外科学会専門医コース・消化器外科学会専門医コース)、②上部消化管外科専門医コースを提供しています。
①上部消化管外科修練医コース(外科学会専門医コース・消化器外科学会専門医コース)
(1) 一般目標:日本外科学会専門医および日本消化器外科学会専門医を取得するための症例を経験する。外科経験年数に応じた到達目標を達成するように必要な手術手技・知識や症例数を経験してもらいます。
(2) 到達目標:
・上級医の指導監督下で、胃瘻・腸瘻術などの術者を行うことができる(15 例/年以上:外科学会専門医コース)
・上級医の指導監督下で、幽門側胃切除術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(5 例/年以上:外科学会専門医コース)
・上級医の指導監督下で、胃全摘術、噴門側胃切除術(開腹下・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(5 例/年以上:外科学会専門医コース、15 例/年以上:消化器外科専門医コース)
・上級医の指導監督下で、腹腔鏡下胃部分切除術の術者および助手を行うことができる(5 例/年以上:消化器外科専門医コース)
・上部消化管関連学会において症例報告や一般演題の筆頭または共同演者として発表を行うことができる(1 回/年以上)
・修練期間中に経験した学術的意義の高い症例について、和文または英文で症例報告論文を発表することができる(1 編/年以上)
②上部消化管外科専門医コース
(1) 一般目標:外科専門医取得後上部消化管外科を専門とし臨床・研究・教育を実践していく医師を養成する。日本食道学会食道外科専門医・日本内視鏡外科学 会技術認定(胃または食道)を取得し、最終的には日本外科学会指導医および 日本消化器外科学会指導医などを取得し後輩の指導行う。
(2) 到達目標:
・上級医の指導監督下で、幽門側胃切除術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(15 例/年以上)
・上級医の指導監督下で、胃全摘術、噴門側胃切除術(開腹下・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(5 例/年以上)
・上級医の指導監督下で、胸部食道切除術、食道亜全摘術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(5 例/年以上)
・修練医を指導する立場として、胃瘻・腸瘻造設術や開腹下幽門側胃切除術、腹腔鏡下胃部分切除術などの助手を行うことができる(10 例/年以上)
・上部消化管関連学会において公募演題の筆頭または共同演者として発表を行うことができる(2 回/年以上)
・上部消化管関連学会において症例報告の筆頭演者を指導する立場として発表を行うことができる(1 回/年以上)
・上記学術集会において発表した研究演題について、和文または英文で原著論文を発表することができる(1 編/年以上)
手術件数
昨今は減少傾向ですが、50 例以上の胃癌切除術を行っています。早期胃癌に対しては積極的に腹腔鏡手術を行っています。食道癌に対しては胸腔鏡下での実施率が年々高くなり、腫瘍径の大きいものや周囲浸潤が強く疑われる症例以外では胸腔鏡手術で行っています。また、胃粘膜腫瘍に対しては Lesion lifting 法を用いて、少ない腹腔鏡ポートで胃部分切除術を行っています。その他食道裂孔ヘルニア、横隔膜ヘルニアなどの手術も行っています。日本食道学会食道外科専門医認定指導施設であり、指導医も常駐し、日本食道学会食道外科専門医の取得についても自施設の症例で目標に到達できる体制となっています。