下部消化管外科

下部消化管グループは、下部消化管外科を専門とし臨床・研究・教育に従事する医師と下部消化管外科の手術手技や知識の習得のためローテーションで従事する医師で成り立っています。安全・確実・根治性が保たれた質の高い手術を目指し全員で日々研鑽を行っています。下部消化管手術の教育的要素の高さを生かし、開腹・腹腔鏡手術ともに若手外科医に積極的に術者を担当してもらっています。若手は腹腔鏡下手術の順応性も早く、短期間で腹腔鏡下大腸切除術をこなすことができることが特徴です。2017 年には、新規 2 名の日本内視鏡外科学会技術認定取得者を輩出することができました。また、2019 年より、近年保険収載されたロボット支援下直腸手術を実施できる体制を整えています。また、術後補助化学療法と進行再発大腸癌に対する薬物療法を、科内の薬物療法専任医師と協力して行っています。その他、大腸内視鏡検査を週一回の枠で実施し、症例を選択し大腸3DCT 検査も行っており、幅広い手技・知識を習得できるグループでもあります。

研究テーマ

下記の多施設共同研究に参加中です。

・JCOG 臨床試験 JGOG1107:「治癒切除不能進行大腸癌の原発巣切除における腹腔鏡下手術の有用性に関するランダム化比較第Ⅲ相試験」
・JCOG 臨床試験:「化学療法にて消失した大腸癌肝転移病変に対する拡散強調MRI(DW- MRI)の術前診断能の妥当性に関する研究」
・JCOG 臨床試験 JGOG1612:「局所切除後の垂直断端陰性かつ高リスク下部直腸粘膜下層浸潤癌(pT1 癌)に対するカペシタビン併用放射線療法の単群検証的試験」
・JCOG 臨床試験 JCOG1805:「再発リスク因子を有するStage Ⅱ大腸癌に対する術後補助化学療法の有用性に関するランダム化第Ⅲ相比較試験」
・白色光非拡大内視鏡画像による大腸pT1b癌のコンピュータ支援診断システムの開発:多施設共同研究
・後方視的観察研究による日本人リンチ症候群の大腸病変に対する消化器内視鏡研究
・家族性大腸腺腫症(FAP)に関する後方視的多施設共同二次研究

貴重な症例の学会報告や論文作成、各種学会への参加発表、論文作成も担当を決め適宜行い、学術的な活動も幅広く行っています。臨床、研究、教育の3点から診断技術、治療技術を幅広く習得し全員で診療にあたっていきたいと考えています。

研究発表・論文
当グループは、経験した貴重な症例の学会報告や論文作成、各主要学会への参加と研究発表、および論文作成も担当を決めて適宜行い、学術的な活動も幅広く行っています。下部消化管外科に関連する以下の学会発表や論文発表(症例報告や原著論文)を行います。

・日本外科学会学術集会(4 月)
・日本消化器外科学会総会(7 月)
・日本大腸肛門病学会学術集会(11 月)
・日本臨床外科学会総会(11 月)
・日本内視鏡外科学会総会(12 月)
・大腸癌研究会(年 2 回、1 月・7 月)
・外科集談会や消化器病学会地方会など

特色

当グループでは、下部消化管診療に必要な専門医・指導医の取得を積極的に支援しており、2つのカリキュラム①大腸肛門病修練医コース(外科学会専門医コース・消化器外科学会専門医コース)②大腸肛門病専門医コースを提供しています。

①大腸肛門病修練医コース(外科学会専門医コース・消化器外科学会専門医コース)
(1) 一般目標:日本外科学会専門医および日本消化器外科学会専門医を取得するための症例を経験する。外科経験年数に応じた到達目標を達成するように必要な手術手技・知識や症例数を経験してもらいます。
(2) 到達目標:
・上級医の指導監督下で、痔疾患手術、ストーマ造設術・閉鎖術などの術者を行うことができる(15 例/年以上:外科学会専門医コース)
・上級医の指導監督下で、虫垂切除術・回盲部切除術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(10 例/年以上:外科学会専門医コース)
・上級医の指導監督下で、結腸右半切除術(開腹・腹腔鏡下)・S 状結腸切除術あるいは直腸高位前方切除術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(5 例/年以上:外科学会専門医コース、15 例 /年以上:消化器外科専門医コース)
・上級医の指導監督下で、横行結腸切除、左半結腸切除、低位切除術、腹会陰式直腸切断術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(15 例/年以上:消化器外科専門医コース)
・下部消化管関連学会において症例報告や一般演題の筆頭または共同演者として発表を行うことができる(1 回/年以上)
・修練期間中に経験した学術的意義の高い症例について、和文または英文で症例報告論文を発表することができる(1 編/年以上)

②大腸肛門病専門医コース
(1) 一般目標:外科専門医取得後下部消化管外科を専門とし臨床・研究・教育を実践していく医師を養成する。日本大腸肛門病学会専門医・日本内視鏡外科学会技術認定(大腸)を取得し、最終的には日本大腸肛門病学会指導医(日本外科学会指導医および日本消化器外科学会指導医など)を取得し後輩の指導行う。
(2) 到達目標:
・上級医の指導監督下で、結腸右半切除術、S 状結腸切除術、直腸高位前方切除術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(15例/年以上)
・上級医の指導監督下で、横行結腸切除術、結腸左半切除術、低位前方切除術、大腸全摘術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(15 例/年以上)
・上級医の指導監督下で、超低位前方切除術、括約筋間切除術(開腹・腹腔鏡下)の術者および助手を行うことができる(10 例/年以上)
・修練医を指導する立場として、痔疾患手術、ストーマ造設術・閉鎖術や開腹下結腸切除術などの助手を行うことができる(20 例/年以上)
・修練医を指導する立場として、虫垂切除術・回盲部切除術(開腹・腹腔鏡下)の助手を行うことができる(10 例/年以上)
・下部消化管関連学会において公募演題の筆頭または共同演者として発表を行うことができる(2 回/年以上)
・下部消化管関連学会において症例報告の筆頭演者を指導する立場として発表を行うことができる(1 回/年以上)
・上記学術集会において発表した研究演題について、和文または英文で原著論文を発表することができる(1 編/年以上)

手術件数

通年約 200 例の大腸癌切除術のうち、約 80% 腹腔鏡下で行っています。直腸癌に関し腹腔鏡下での実施率が年々高くなる一方で、局所進行結腸癌に対する開腹手術例が増加している傾向がみられます。 また、ストーマ造設・閉鎖術、憩室炎や炎症性腸疾患の手術も行っているほか、近年は痔疾患の手術も増加しています。日本消化器外科学会専門医制度における低・中難易度手術も多く、日本大腸肛門病学会専門医の取得についても自施設の 症例で目標に到達できる体制となりつつあります。